もちろん、手術全体に大きな問題はありませんが、仮にそうした“失敗”があった場合、若手にはその先の処置はさせません。切ったところは縫ってリカバリーできますが、損傷=臓器の形を崩してしまったら元には戻せません。若手がそれをしっかり理解して適切な処置をできているかどうか、指導者側の判断も重要になってきます。
こうした経験を重ねて課題をクリアした若手には、指導医が付いて執刀を任せる段階に進ませますが、その前に脱落してしまう若手もいます。プレッシャーに耐えきれず、習得しているはずの手技に支障を来して自分が考えているような動作ができなくなる、いわゆる「イップス」と呼ばれる状態になる。手術の前日になると緊張して眠れない。自律神経がコントロールできず手術に臨むと大汗をかいてしまう……。心と体、メンタルとフィジカルのコンディションをしっかり整えることができない若手は外科医には不向きと考えます。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」