がんと向き合い生きていく

コロナ患者を診ているがん専門医からの便りで考えたこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 この男性の命は、本当に救えない命だったのでしょうか。コロナ感染での死亡は「昨日までは死ぬはずのない人の死」なのです。

 同じ某区に住む、ワクチン接種ができていない子供を小学校に電車で通わせている若い母親からのメールです。

「今度の変異種は空気感染かもしれないと言われます。今日は恐ろしいほどの暑さでした。この空気中にコロナウイルスがいる。穏やかな日常生活を願うばかりです」

 ただ、がまん、がまん、自粛、自粛、これが1年半以上も続いても先が見えません。ここにきて感染者が減ってきた? しかし、中等症、重症は依然として高い水準が続いています。

 9月9日、菅首相は「新型コロナとの闘いに明け暮れた日々だった。国民の命と暮らしを守る一心で走り続けてきた」と話されました。

 ウソつけ! と言いたくなります。首相は、政府は、国会議員は、本当の現場を知りません。明らかにコロナを見くびっていました。去年から「GoTo」に固執して、命よりも経済を優先させました。PCR検査をもっとたくさん行うように指摘されても、わずかしか増やしませんでした。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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