がんと向き合い生きていく

テレワークの普及はがんリスク上昇につながってしまうのではないか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 私は、ただただAさんの話を聞いていて、何も答えられませんでした。ただ、Aさんが一方的に話をするのは、以前と同じで健在です。

■運動不足で肥満になり…

 テレワークでは、夫がずっと家に居ることで、家庭によってはいろいろな問題が起こるのだなと思いました。

 厚労省は、テレワークを推進するメリットについて次のようなことを挙げています。

「オフィスでの勤務に比べ、働く時間や場所を柔軟に活用できる。通勤時間の短縮や、これに伴う心身の負担の軽減。仕事に集中できる環境での業務の実施により、業務効率化につながり、それに伴う時間外労働が削減できる。育児や介護と仕事の両立の一助となるなど、仕事と生活の調和を図ることが可能となる」

 それはそうなのかもしれません。しかし、私はメリットばかりではないように思います。たとえば、国立がん研究センターがん情報サービスの推計によれば、がん予防のためには「適度な身体活動」「適正体重の維持」「節酒(飲酒する場合には節度のある飲酒を)」「バランスのよい食生活」「禁煙」の5つの生活習慣を挙げています。これで、がんのリスクが男性で約43%、女性で約37%低くなるというのです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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