独白 愉快な“病人”たち

舞台上で息が苦しくなって…俳優・松尾貴史さん「肺塞栓症」を振り返る

松尾貴史さん(本人提供)

 念のため公演が始まった頃に人間ドックの予約を入れて、東京公演と地方公演の間の12月11日に調べに行ったのです。すると「一度、循環器系を診てもらった方がいい」という結果が出て、14日、合間を見て心臓血管研究所付属病院へ行きました。

 翌日には長野へ移動し、あさってには本番というタイミングでした。医師にそれを告げると、「冗談じゃない。死にますよ」と言われ、まさかの緊急入院。「肺塞栓症」と診断され、集中治療室で酸素マスクと点滴につながれてしまいました。

 公演の中止に胸を痛めながらもどうすることもできず、ベッドの中ですっかり観念しました。

 でもその日の夜、朗報があったのです。「公演中の舞台『鷗外の怪談』で紀伊国屋演劇賞の個人賞をいただけることになったが、受けるか?」という事務所からの確認の電話でした。それを聞いて、落ち込んでいたグラフが一気にゼロ座標に戻りました。「襲う病あれば拾う神あり」と思い、非常にうれしかったです。

2 / 6 ページ

関連記事