独白 愉快な“病人”たち

舞台上で息が苦しくなって…俳優・松尾貴史さん「肺塞栓症」を振り返る

松尾貴史さん(本人提供)

■面白い話が聞けるのでは思い大部屋を希望

 3日間の集中治療室の後は、大部屋の病室を希望しました。カーテンで仕切られているので顔も見えないし、なにか面白い話が聞けるかもしれないと思ったからです。

 案の定、私の隣のベッドにいたのは毎日フィットネスジムでバイクをこいでいるという65歳ぐらいのおじさんで、何キロも負荷をかけて鍛えていることを、部屋に来る看護師さん全員に自慢していました。毎日のように「ちょっとこの脚、触ってみて」「わぁ、すごいですね~」というおじさんと看護師さんの会話をカーテンの仕切り越しに聞かされました(笑い)。

 次にそのベッドにやって来たのは航空会社のパイロットで、入院の理由は定員200人以上の旅客機を操縦するためにクリアしなければいけない検査のためだと小耳にはさみました。飛行機の座席数の違いでそんな基準があるとは初耳でした。その人は数学が好きらしくて、看護師さんに「虚数」の話を延々としていました。「ね、面白いでしょ」というパイロットに対し、「面白いですね~」と話を合わせる看護師さんの決して面白そうじゃない相づちが聞こえてきたりして、4人部屋はまったく退屈しませんでした。

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