独白 愉快な“病人”たち

舞台上で息が苦しくなって…俳優・松尾貴史さん「肺塞栓症」を振り返る

松尾貴史さん(本人提供)

 ちょうど2週間で退院し、年明けから稽古を再開。1月8日の兵庫県から最後の山形県までやり切り、千秋楽ではカーテンコールを5回もいただきました。とてもありがたかったです。

 今でも血液をサラサラにする抗凝固薬を朝夕1錠ずつ服用しています。血管の狭いところに入っている血栓が取れにくくて、まだ少しだけ残っているんです。きれいになくなれば薬もいらないんじゃないかな。次の検査でその後の方針が決まると思います。

 人は経験主義で考えることが多いと思うんです。健康に関しても、「今までこのくらい平気だったから、この程度は大丈夫」というバイアスが人の心理には必ずある。今回、緊急入院という事態になってみて、改めてそのバイアスを差し引いて、自分を冷静に客観的に見なければいけないと学んだ気がします。「1×1」は「1」だけれど、「1.1×1.1」は累進で大きくなる。お酒を飲むときに水を飲まなかった……みたいなささいな油断でも、重なれば大きなリスクになり得るということです。

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