上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

人工心臓は莫大な費用がかかる 再生医療の進化に期待したい

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 ただし、前回も少し触れたように性能が飛躍的に向上した補助人工心臓が開発されたとしても、治療費がとてつもなく莫大になることが予想されます。

 現在でも、補助人工心臓による治療は製品価格が1600万~1800万円、手術などの費用がプラスされてトータルで2000万円くらいかかります。維持費も1日5万円程度が必要です。新開発の補助人工心臓となれば、その3倍、4倍になってもおかしくありません。

 そうなると、巨額の治療費をどこが負担するのかという問題が生じます。国民皆保険制度の日本では、国が保険診療でかかる医療費の7~9割を負担していますが、すでに崩壊寸前です。かといって、保険適用外で自己負担となれば、治療費を支払える人はほとんどいないでしょう。

■人工物にはリスクが付いて回る

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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