尿路感染症は、その発症部位から、腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎などに分けられます。SGLT2阻害薬の副作用として多く報告されているのは膀胱炎です。膀胱炎の原因になる細菌は大腸菌が70%を占め、ほかには比較的弱毒とされる腸内細菌がほとんどですが、高熱が出るなどして全身が衰弱すると腸管から血液内に移動して危険な菌血症の原因にもなるので厄介な場合もあります。そうした細菌は膀胱や尿道といった部位に取り付きやすく、尿糖が高くなるとリスクが増大するのです。とりわけ、男性に比べて尿道が短い女性は膀胱炎になりやすいといわれていますから、より注意が必要です。また、高齢になると膀胱や尿道の働きが低下することで尿道口から細菌が侵入して尿路感染症にかかりやすくなります。こちらも気を付けなければなりません。
尿路感染症が悪化すると、敗血症やDIC(播種性血管内凝固症候群)といった深刻な疾患を引き起こすケースもあり、最悪の場合、死に至る可能性があります。また、心不全がある人は、尿路感染症が一気に病状を悪化させる引き金になるリスクもあるのです。ですから、細心の注意を払うことなく手軽にSGLT2阻害薬を心不全の治療に使うのは“もろ刃の剣”といえるでしょう。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」