認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

検査で「異常なし。大丈夫」と言われても油断しない

写真はイメージ(C)PIXTA

 認知症の最も多くを占めるアルツハイマー病は、「健康な状態→SCD→MCI→アルツハイマー病」と年単位の時間をかけて移行していきます。なお、SCDの全てがMCIになるのではなく、またMCIの全てが認知症になるわけではありません。研究では、MCIの半数が、5年以内に認知症(アルツハイマー病)へ移行するといわれています。

 ご自身だけが変化を感じている段階、あるいは周囲も変化を感じているけど、仕事が普通にでき日常生活も自立して送れている段階は、認知症より前の段階、つまりSCDやMCIの可能性があります。

 その場合、簡単な神経心理学検査では、正常範囲の結果しか出ません。CTやMRIの脳画像検査でも、SCDやMCIの段階では脳の形態の変化は明らかではありませんから、やはり異常なしとなってしまいます。

 しかし、だからといって、放置していいわけではないのです。たとえば「長谷川式」は満点が30点、20点以下が認知症の疑いありと判断されますが、25、26点が「大丈夫」かというと、そうは言い切れませんよね。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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