ただ、カテーテル治療が有効なのは主にひざの上の血管に対してです。ひざの下の血管では、再発したり、術後にトラブルが生じるリスクが高くなってしまいます。
かといって、カテーテル治療が難しい場所に対してバイパス手術を行った場合、もしもうまくいかなかったときは切断に至ってしまうケースが少なくありません。そのため、施設によって血管外科の“やる気”に差があるのが現状です。仮に他に方法がなく最善を尽くしてバイパス手術をしても改善せずに切断となってしまうという終末期を患者さんと共有している施設ではバイパス手術を積極的に検討しますが、自分たちの手術がその一因になってしまう事態を避けたいと考えている血管外科は消極的になります。
しかも、重症な下肢虚血は、末期糖尿病や糖尿病性腎症で人工透析を受けている患者さんに多く見られるため、もともと体全体のコンディションが悪く、バイパス用に使う静脈も状態が悪いケースがほとんどです。最近は人工血管の質が非常に高くなっているので、以前ほどバイパス血管の採取に苦労することは少なくなりましたが、依然としてハードルは高いといえるでしょう。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」