認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

サプリははっきりしたエビデンスが見つかっているものは少ない

WHOは推奨しないと踏み込んだ発言を…

 それまでも、ホップ苦味酸がアルツハイマー病への予防効果を示すことは非臨床試験で報告されていました。ただ、ヒトでの効果は十分には検証されておらず、私たちが物忘れを自覚する中高年(認知症ではなく健常者)を対象にランダム化二重盲検比較試験を行ったのです。ランダム化二重盲検比較試験とは、被験者を無作為に被験薬を投与するグループとプラセボ(偽薬)を投与するグループに分け、両群同時に、同じ期間投与し、その結果を見る方法です。

 研究では、ホップ苦味酸が中高齢者の認知機能の中でも特に注意機能、ストレス状態、気分状態を改善することが明らかになりました。

 ホップ苦味酸を活用したサプリの毎日の活用が認知症予防につながることを期待して、ヒトでの作用機序解明や軽症アルツハイマー病患者さんを対象にした効果検証が進められていますが、現段階では、「ホップ苦味酸が認知症を予防する」とはっきり言えるところまでデータは確立されていません。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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