われわれの体は体温と環境温度の差が10度を超えると、生体の状態に支障を来し得るとされています。たとえば心臓手術を行う際、患者さんの深部体温(脳や内臓といった体の内部の温度)が37度とすると、人工心肺装置を使って血液を冷やしてから体に戻す場合、血液の温度差は10度以内にとどめます。それ以上、温度差があると、血液の成分が壊れるなどさまざまな問題が起こってしまうからです。
深部体温が37度弱でエアコンを20度に設定した場合、17度の温度差があります。深部体温は体の表面の温度よりも高いので、エアコンで急激に室温を冷やすとしても温度差は15度程度にとどめましょう。そのうえで、徐々に体が冷えてきたなと感じたら、設定温度を27度くらいまで上げるのがいいでしょう。
心臓にトラブルがあったり、薬をいくつも飲んでいる人は、急激に体を冷やすとさらにリスクが高くなります。血管が一気に縮まって血圧が急に上昇したり、血管がけいれんを起こしたような状態になって冠動脈の血流低下を招くケースもあります。「急激な変化」を避け、自分が身を置く環境の管理はゆっくり行うように心がけてください。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」