がんと向き合い生きていく

「命に比べたら髪の毛なんか」と言われても本人には重大事

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■腫瘍内科医と皮膚科医の連携が必要

 抗がん剤治療の皮膚障害には、脱毛のほかに色素沈着、疼痛、皮膚潰瘍、爪周囲炎などが見られ、皮膚科医に診察をお願いすることが多くあります。たとえば、胃がん、肝臓がん、直腸がん、乳がんなどで使われる抗がん剤「5-FU(フルオロウラシル)」を長く服用していると、皮膚や爪が黒ずんでくることがあります。中には痛みを伴う場合も認められます。

 分子標的薬のEGFR(上皮成長因子受容体)阻害薬「エルロチニブ(タルセバ)」で見られる皮膚障害=発疹は、その多くが皮膚に分布するEGFRに関与していると考えられていて、一般の薬のアレルギーによる発疹とは違っている場合があります。つまり、薬ががんに対して効いていることで発疹が現れている可能性があるのです。

 そのため、発疹が出たからすぐに投薬をやめるのではなく、正確な診断、治療、管理が大切です。皮膚科医と腫瘍内科医の密なる連携が必要になります。治療中止は患者の予後に大きく関わります。アメリカでは、薬による皮膚障害を専門とする皮膚科医もいるようです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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