がんと向き合い生きていく

食べられる幸せに感謝しなければ…食道がんの知人と話して思ったこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 秋になるとイナゴを捕まえて、佃煮にして食べました。カリカリしていて、けっこうおいしかった思い出があります。最近は田んぼにイナゴがいなくなったので、食べられなくなりました。

 小学校に入学した春、母が結核の病院から退院して、一緒に暮らせるようになりました。この時、私はすきやきを初めて食べました。肉と糸こんにゃくがおいしかったのですが、「いとん、いとん」と言って、大人を笑わせたことを思い出します。この時、バナナも初めて食べました。「世の中にはこんなにおいしいものがあるんだ」と思ったものでした。

 高校受験の時は「合格したら寿司を食べたい」と父に言った記憶があります。ただ、その時の寿司の味は覚えていません。

 大学生の頃、日本海ではハタハタがよく取れた時期がありました。下宿では、焼いたハタハタが連日続いたことがあって、一時、少し嫌いになりました。ところが、今はハタハタは魚屋さんではなかなか手に入りません。たまに妻が「ハタハタがあった」と言って買ってきて、味噌で焼いてくれます。とてもおいしいです。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事