Dr.中川 がんサバイバーの知恵

子宮頸がんステージ2bで手術はNG 世界標準を無視して被害も

原千晶さんは31歳で診断が(C)日刊ゲンダイ

 スウェーデンの子宮頚がんの治療法を見ると、ステージ2全体では放射線治療が86.0%、手術は7.4%。ステージ2bは放射線治療が89.7%で、手術はわずか4.3%。より放射線治療が中心です。

 ところが、日本ではステージ2bの子宮頚がん治療で長く手術が推奨されてきました。2007年版のガイドラインでは広汎(こうはん)子宮全摘手術を推奨。2011年版で「広汎子宮全摘手術あるいは同時化学放射線療法が推奨される」と化学放射線治療の記載があるものの、手術を前に記載。ステージ2bの子宮頚がん治療で世界標準である化学放射線治療が、1番手に推奨されたのは今年の2022年版からです。

 2011年から放射線治療が少しずつ増えてきたとはいえ、2019年の治療実績は手術が4割に上ります。スウェーデンの実に6倍です。

 ランセットやニューイングランド・ジャーナルといった一流医学誌に掲載された論文から、放射線は手術と同等の生存率。化学放射線治療は放射線に勝ることが分かっていますから、三段論法的に化学放射線治療が手術を上回ると推測できます。つまり、化学放射線治療がベストです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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