Dr.中川 がんサバイバーの知恵

長崎大病院で医療事故…「ロボット手術」の安全性と医療施設の選択基準

保険適用がなければ自費でロボット手術を選択することはリスクが大きい(C)PIXTA

 ロボット手術は細かい作業も可能で、毛筆で米粒に字を書くようなこともできます。熟練した医師は、「患者の体の中にいるようだ」と表現することも。それで、出血量や手術後の痛みを減らせるほか、入院期間の短縮もメリットです。

 がんの手術で最初にロボット手術が適応になったのは前立腺がんで、その後、ほとんどのがんに広がっています。ロボット導入施設では、手術の主流といっていいかもしれません。

 そんな状況での医療事故ですが、今回は推測ながら、ロボットが直接の原因とは考えにくい。逆にいうと今回のような大量出血は、人間が直接行う内視鏡手術でも開腹手術でも起こる可能性があります。

 メスで血管を傷つけたり、電気メスで血管にヤケドができたりすると、出血のリスクになります。そのリスクは、手術方法を問わずに生じる恐れがあり、残念ながらゼロにはできません。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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