Dr.中川 がんサバイバーの知恵

長崎大病院で医療事故…「ロボット手術」の安全性と医療施設の選択基準

保険適用がなければ自費でロボット手術を選択することはリスクが大きい(C)PIXTA

 リスクを大きくする要因のひとつが手振れです。人間が直接執刀する場合は、手振れがそのまま手術器具に伝わりますが、ロボットには手振れ防止機能がついているため、ロボットの方が安全性が高いといえます。

 では、ロボットを選ぶか、人間による開腹や内視鏡を選ぶか。その見極めは、手術を受けるがんに対してロボット手術が保険適用があるかどうかです。保険適用アリなら、従来の手術に対する優位性が検証されているので、ロボットを選択してよいでしょう。保険適用がなければ、優位性が担保されておらず、自費でロボットを選択することはお勧めできません。

 ダビンチの価格は2億~3億円と高額で、導入して間もない医療機関では、コスト回収にロボット手術が勧められることがあるかもしれませんが、その施設でのロボット手術実績は少ない。導入直後の医療機関も避けるのが無難だと思います。

 外科手術では出血や感染などがリスクですが、放射線治療にはそのようなリスクがなく、治療効果は手術と同等。日本のがん治療は手術偏重傾向ですが、必ずしも手術、それも最新手術がいいとは限らないということです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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