老親・家族 在宅での看取り方

自力で歩いての通院が「病気に打ち勝つ気概」の確認になっていたが…

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「それは分かっているんだけどさ」(患者)

 患者さんにとって受け入れがたい現実であることを理解し共感し、それでも少しでも患者さんのQOL(生活の質)を維持向上させるために、患者さんの思いへの寄り添いは重要であり、そんな交流も自宅で患者さんがリラックスしているからこそできることでした。

「今後はこの自宅に1人で住む予定ですか?」(私)

「今のところは決めてないですけど体調とかで決めていこうかなと。40年以上会っていない子供がいるけど、向こうの生活もあるわけだしね」(患者)

「今後はお子さまと連絡をとってという感じですかね」(私)

「向こうに拒否されたら無理ですけどね」(患者)

 当初は身寄りがいないとおっしゃっていましたが、長らく会っていなかった息子の連絡先が分かったことを教えていただきました。

 患者さんがご自身の病気と向き合おうとすると、どうしても人生と向き合うことになる。そんなお手伝いを患者さんに寄り添いながら行うのも在宅医療の役割だと考えています。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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