一方で、少し古いデータではありますが、医療経済研究機構が2015年4月から2016年3月のレセプトデータを調査した報告によると、認知症の診断直後に抗認知症薬を処方された65歳以上の患者さんが、医療機関3万4492施設中26万2279例存在しました。
その患者さんのうち、甲状腺機能検査実施率は約3割。つまりは、7割の患者さんが、「もしかして認知機能低下は甲状腺機能低下症のせいかもしれない?」と疑われず、検査を実施されていなかったのです。
前回、「当初は認知症を疑ったが、実は別の疾患だったという症例を経験したことがある」と回答した医者が全体の約48%いた、という意識調査の結果を紹介しましたが、「お医者さんが認知症と診断したから、そうなんだ」とすぐに受け止めるのはいかがなものか、ということが分かってもらえるでしょうか? なんでもかんでも疑えばいい、ということではありません。しかし、たとえばがんであれば、医者の診断や治療方針に対して「本当にそうなのか」という疑問を抱き、自身で情報を集めたり、セカンドオピニオンを検討するケースは少なくないでしょう。
認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う