医療だけでは幸せになれない

欧米の「ロックダウン」と日本の「外出自粛」…個人と全体の問題を考える

イタリアではクリスマス中もロックダウンが続いた(C)ロイター/Valeria Mongelli/Hans Lucas

 憲法に基づけば、結婚は両性の合意「のみ」に基づいて成立し、両親の許しは不要どころか、両親の結婚を認めないという態度は憲法違反になる。しかし、両親の許しが得られないから駆け落ち同然で結婚したという話は時々耳にするが、許してくれない親に対し、憲法違反だと反論したという話は聞いたことがない。

 何の話だか分からないかもしれないが、話は単純である。日本人のこの結婚に際し両親の許しを得るという態度と、自粛は似ているということである。日本では、法律より道徳や倫理が個人のレベルにおいてこそ優先される傾向が強いのかもしれないということだ。

 ところが、それが道徳観、倫理観というより、単なる同調圧力ではないかという指摘がある。少なくとも個人の自発的な判断にゆだねられた結果、個人個人が、道徳的にどうか、倫理的にどうかを考えた末に判断し、対応を決めたかどうかといわれれば、そうではないというのが現実だろう。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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