上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

睡眠時無呼吸症候群の治療装置CPAPが心臓を守り若さを保つ

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 CPAPによって無呼吸やいびきが改善されることで熟睡できるため、就寝時に分泌される成長ホルモンが増加し、脂肪の分解、筋肉の増強、意欲の生成などが促進されるといわれています。通常、成長ホルモンは30歳を過ぎると分泌量が減りますが、睡眠の質が下がっているととりわけ急激に減ってしまいます。CPAPにはそれを改善する可能性があるといえるでしょう。

 そもそも、体内に十分な量の酸素を取り込むことは健康にとって有益だと考えられます。CPAPを使っていれば、毎日、就寝している6~8時間にわたって酸素が送り込まれるわけですから、使用している人と使用していない人では、間違いなく大きな差が生まれるといえるでしょう。

 ただし、現時点ではCPAPはあくまで睡眠時無呼吸症候群の診断を受け、治療として保険適用(3割負担で月4700円程度)になるので、アンチエイジングや予防を目的として使うなら装置を自費で購入する必要があります。最近は改良によって本体がタブレットPC程度にまで小型化されているタイプも登場しています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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