がんと向き合い生きていく

化学療法の前に受精卵の凍結保存を選び授かった子供が希望になった

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 東京都は2023年度、健康な女性の卵子凍結にかかる費用を1人あたり30万円程度助成することに決めました。少子化対策の一環で、未婚の女性が将来の妊娠・出産の可能性を残せるよう後押しするようです。高齢出産にはならずに、若いうちに仕事をしながらでも出産できる、キャリアに不利にならない社会でなければならない--日本社会の大事な課題だと思います。

 私は産科の医師ではないので、精子や卵子の凍結に詳しくはありませんが、白血病の治療で末梢血幹細胞の凍結はずいぶん行いました。赤血球を除去し、プログラムフリーザーでCD34細胞をマイナス196度の液体窒素タンクで保存します。いわば“命の保存”です。これも、施設によっては15年経過したものは廃棄されるようです。

 私は、亡くなったMさんのことを思うと、奥さん、そしてお会いしたことはない息子さんが、元気で生活されていることを祈るばかりです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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