がんと向き合い生きていく

“診察待ち”で再会したかつての上長は3回目のがん手術を受けるという

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「5年前、前立腺がんの手術を受けました。去年は食道がんを見つけていただいて、内視鏡で切除してもらいました。早く見つけてくれたおかげで長生きさせていただいています。今度は胃がんが見つかりまして、1カ月先ですが、これも内視鏡で取っていただける予定になっています。それに、私は心臓にペースメーカーが入っているんです。もう97歳になります」

 Sさんは、Fさんが97歳と聞いて驚きました。元気そうで、しっかりしていて、背筋も一緒に働いていた当時と変わらない。年齢はもっと若いと思っていたので、すごいと思いました。

 それでも考えてみれば、Fさんと一緒に働いたのはもう40年以上も前になります。長い間、医療関係の仕事をされたFさんは、病院にはとても詳しい方でした。

「ここの病院は、昔は有名な医師がたくさんおられました。いまは有名な方は少なくなりました。でも、しっかりした医師が、よくやってくれていると思います。医師のみなさんのレベルが高くて、しかも最先端医療が取り入れられているんだと思いますよ。Sさん、お互いに昔の思い出は尽きませんね。コロナが落ち着いていれば、また、秋にでも食事会をしたいですな」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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