がんと向き合い生きていく

“診察待ち”で再会したかつての上長は3回目のがん手術を受けるという

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 話がそこまで来て、Fさんの呼び出し器が鳴りました。Fさんは「それではお先に。終わったら、会計のところで待っています」と、笑顔で診察室に入っていかれました。

■昔、一緒に食事した食堂に入ると…

 そう言われれば、Fさんはたしか病院の建設だけではなく、人材集めや感染予防などのマニュアル作りにも積極的だった。隠れたすごい功労者だったなと思い出しました。ある新病院の設立にあたっては、院長候補としてある大学のM教授に白羽の矢が立った時、就任を説得されたひとりがFさんだったと、ずっと後になってから聞いたこともありました。

 Fさんが診察室から出てくると、今度はSさんの呼び出し器が鳴りました。

 Sさんの診察は15分ほどで終わり、診察室を出て会計に向かおうとしたところ、今度は知らない男性に呼び止められました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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