これを受け、今度は心臓の温度を「体温」くらいまで上げても問題ないのではないか、という意見が登場します。当時は心臓を冷却する方法が当たり前だった時代ですから、突拍子もない話だと考えられていました。しかし、心機能が悪化している人ほど、心臓を体温近くまで上げたほうが成績が良いという結果が続々と報告されたのです。
■「順行性」と「逆行性」を組み合わせる
そしてさらに、心臓が“常温”なのだから、一定時間ごとに冷やして心筋保護液を注入するのではなく、できるだけ持続的に投与するための方法が模索されます。心筋保護液を投与している最中は、基本的に患部に対する手術操作ができません。そのため、頻繁に投与していると手術時間が延びてむしろ心筋のダメージが大きくなってしまいます。そこで、なるべく手術操作を妨げないような投与法として考案されたのが「逆行性投与」という方法です。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」