投与する心筋保護液の温度はガイドラインなどで決まっているわけではありません。施設や手術によって変わってきますが、だいたい15~30度くらいの間に設定され、心筋保護液を投与する機器が付随している人工心肺装置とのバランスが悪くならないような温度が採用されています。
心筋保護液を投与する間隔も、とくに決まっていません。先ほども触れたように、心筋保護液を順行性で投与している間は、手術操作ができなくなります。もしも投与間隔が20分に1回とすれば、手術操作は20分間しかできません。それが40分に1回なら40分間続けて操作できることになります。つまり、投与間隔はできるだけ長いほうが望ましいといえます。
そこで、これまでの経験から問題が起こらない範囲で投与間隔を少しずつ延ばしていき、逆行性で40分に1回、順行性で60分に1回という間隔に行き着いたのです。さらに、心臓の働きが著しく低下している患者さんの場合には、もう少しだけ投与間隔を詰めたり、手術操作の合間はずっと投与し続けるといったように臨機応変に対応しています。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」