老親・家族 在宅での看取り方

心不全の80代父親を看る娘「缶ビールやハイボール1缶なら飲んでもいい?」

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「3月に退院してからは飲んでないんですが、その前は350ミリリットルのビールとかハイボール1缶とかですね」(娘)

「それくらいならいいです」(私)

「転倒が一番怖いですよね、やはり」(娘)

「そうですね」(私)

 入院中のベッド中心の生活とは違い、自宅に帰られて、患者さんやご家族もホッとされている様子が伝わってきます。

 慣れた自宅で日常生活を送る中で、患者さんのQOL(生活の質)を維持しながら、ADLの低下をなるべく防ぐ療養生活を目指します。

 特にこの男性のように心不全を患う患者さんは、がん患者さんと違い、退院してからも比較的長く過ごされることが多い。しかし、それでも入院が必要となるレベルの症状悪化でADLは確実に低下していきます。入院しているより、在宅医療の方がQOLが維持されやすいとはいえ、安心はできません。患者さんにとって、その生活がいかに豊かなものか。または、つらい中でも大切な充実した良い時間となるか。そんなマネジメントも在宅医療に求められる仕事だと考えるのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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