医療だけでは幸せになれない

マスクの効果を検討した「メタ分析」…1つの論文で多くの論文情報が手に入る

猛暑の中、日傘を差す人(C)共同通信社

 ランダム化比較試験は本連載で紹介したデンマークの研究である。バングラデシュの研究は含まれていない。観察研究とは、ランダム化比較試験のように研究実施側がマスクを勧める群と勧めない群を意図的に分けるのではなく、現実の世界でマスクを着けている人と着けていない人での発症率を比較したり、コロナに感染した人としていない人で、過去にマスクを着けていたか・いないかを比較したりする研究である。ランダム化比較試験と比較すると交絡因子や自己選択バイアスの影響を受けやすいという欠点があるが、より一般的な集団を対象にしているというメリットもある。

 メタ分析は一般に最も信頼に値する論文と考えられているが、必ずしもそういうわけではない。メタ分析の結果が後の単独のランダム化比較試験で否定されることもしばしば起きる。

■さまざまなバイアスの影響を受けやすい

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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