承認されたアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」ってどんな薬?

岩坪威教授(C)日刊ゲンダイ

 これによって引き起こされるのが、中枢神経細胞の中に存在するタンパク質「タウタンパク質」の蓄積、凝集だ。それとともに神経変性が起こり、神経細胞が死滅。アルツハイマー病発症に至る。ざっくり示すと「アミロイドβ蓄積・凝集↓タウタンパク質蓄積・凝集↓神経細胞死滅↓アルツハイマー病発症」。これが20~30年かけて、脳の中で起こるのだ。 

 アルツハイマー病の薬は長らく「神経細胞に足りなくなった物質を補う薬」だけだった。アルツハイマー病発症のいわば“下流”に働きかける薬で、症状緩和は期待できるものの、病気の進行は止められず、効果のある期間も限られていた。

 一方、レカネマブはアミロイド斑ができる過程で、たまったアミロイドβを除去する薬だ。“上流”に働きかけ、アルツハイマー病発症の流れを食い止める。ヒト対象の研究では、脳内の約60%のアミロイドβが減少したという結果が出ている。投与のタイミング次第で、認知症を発症しないまま寿命を全うできる可能性も将来的には期待できる。

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