上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「旅行」は健康寿命を延ばし、心臓の健康維持にも役立つ

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 出発時には、心臓疾患の原因になる動脈硬化や老化を促進する活性酸素の量を低下させるうえ、活性酸素を取り除く酵素の増加も見られることが分かりました。ワクワクする気持ちが脳内3大幸せホルモンであるドーパミン・オキシトシン・セロトニンを適度に引き出すのでしょう。旅行中も、リラックス時に高くなる脳のα波が増え、コルチゾールの分泌をさらに低下させます。コルチゾールは血管を収縮させたり、血中ナトリウムを増加させる作用があり、血圧を急上昇させます。また、コルチゾール濃度が上がると、血糖値やコレステロールの数値が高くなります。つまり旅行は、高血圧、高血糖、高コレステロールという心臓疾患の代表的なリスク因子を減らす効果があるのです。

 ほかにも、旅行先では日常生活よりもたくさん歩くなど身体活動が増加します。それが血液循環を良好な状態に促すことにもつながります。普段、運動とはあまり縁がない人でも、旅行に行けば自然と体を動かす機会ができるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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