上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「旅行」は健康寿命を延ばし、心臓の健康維持にも役立つ

旅行は身体的にも精神的にも健康効果が見込める(C)日刊ゲンダイ
精神的にもプラス効果が

 こうした身体的な要因だけではなく、旅行は精神的な面からも心臓を含めた健康効果が見込めます。とりわけ、中高年にとってはプラスが大きいと考えられます。

 個人旅行、あるいは現地で終日フリーのパックツアーなどでは、出発前から「どこに行こうか」「現地では何をしようか」「どのような行程で周遊するか」といった計画を自分で立てます。準備段階から予定や行動スケジュールの管理を行うことは、脳に新たな刺激を与えることになります。

 また、旅先では普段と違った食事をとったり、現地の人と交流したり、見たことがなかった景色を目にしたり、初めての体験をしたりと、ここでも新たな刺激が入ってきます。

 さらに、いまは旅行中にスマホで写真や動画を撮る人が多いでしょう。かつて、写真はカメラで撮影して、旅行から帰ってきたら写真店にフィルムを持参して現像してもらうものでした。しかしいまは、スマホに記録されている画像データを自分で整理したり、編集するケースが一般的になっています。旅の思い出を振り返りながら、そうした知的作業を行うことは、これも脳にとって新たな刺激になるうえ、幸福感や充実感が高まってストレスの軽減にもつながり、健康効果をもたらすのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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