私たち医者は、良い薬が出れば、簡単に処方を切り替える傾向があります。患者さんのためを思ってそうするのですが、忙しい診療の中で、患者さんに説明をしっかりせずにそうした変更をすると、思わぬトラブルを招くということがあります。
たとえば、SU剤で治療をしていた、昔からの糖尿病の患者さんに、SU剤では予後を悪化させてしまう可能性がある、とGLP1の処方に切り替えると、患者さんは急に医療費の支払いが跳ね上がったことに驚き、実際には医療機関が儲けているわけではないのに、金儲け主義のように思われたり、「こんな高い薬は要らない」と、元に戻して欲しいと言われることがあるのです。
これから皆保険制度での医療費は、ますます削減が求められる時代になるのですから、行政も病気ごとの適正な治療と適正な医療費について、日々アップデートすることが必要だと思います。新しい薬が出るたびに、必要な医療費も大きく変わることになるからです。皆さんもお医者さんから「新しい良い薬に替えてみましょう」と言われた時には、お金の問題を、ぜひ聞いてみるようにしてください。