糖尿病治療を激変させた新たな薬「SGLT2阻害薬」の正体とは? 医師が解説

石原藤樹院長(提供写真)

 私たち医者は、良い薬が出れば、簡単に処方を切り替える傾向があります。患者さんのためを思ってそうするのですが、忙しい診療の中で、患者さんに説明をしっかりせずにそうした変更をすると、思わぬトラブルを招くということがあります。

 たとえば、SU剤で治療をしていた、昔からの糖尿病の患者さんに、SU剤では予後を悪化させてしまう可能性がある、とGLP1の処方に切り替えると、患者さんは急に医療費の支払いが跳ね上がったことに驚き、実際には医療機関が儲けているわけではないのに、金儲け主義のように思われたり、「こんな高い薬は要らない」と、元に戻して欲しいと言われることがあるのです。

 これから皆保険制度での医療費は、ますます削減が求められる時代になるのですから、行政も病気ごとの適正な治療と適正な医療費について、日々アップデートすることが必要だと思います。新しい薬が出るたびに、必要な医療費も大きく変わることになるからです。皆さんもお医者さんから「新しい良い薬に替えてみましょう」と言われた時には、お金の問題を、ぜひ聞いてみるようにしてください。

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石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

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