糖尿病治療を激変させた新たな薬「SGLT2阻害薬」の正体とは? 医師が解説

SGLT2阻害薬の効果は糖尿病だけにとどまらない

 その臨床試験の結果では、通常の糖尿病治療にエンパグリフロジンを上乗せして使用することにより、3年程度という短期間で、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化による病気のリスクが、14%有意に低下していました。更には総死亡のリスクも有意に32%低下していたのです。

 糖尿病があると、ない場合と比較して、動脈硬化の病気やがんは増え、結果として健康寿命が短くなります。それまでの糖尿病の治療では、血糖値を下げることはできても、こうした病気の増加やそれによる健康寿命の短縮を、改善することはできなかったのです。それが世界標準の厳密な科学的試験で初めて、エンパグリフロジンの治療が健康寿命を改善することが確認されたのです。これは画期的な試験結果でした。

 その後エンパグリフロジン以外のSGLT2阻害薬でも同様の試験が行われ、ほぼ同等の有効性があることが確認されました。

2 / 13 ページ

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事