糖尿病治療を激変させた新たな薬「SGLT2阻害薬」の正体とは? 医師が解説

良い治療をしようと思うほど医療費の負担が増える…

 しかし、それ以外は特に安全性に関する不安もなく、安全に使用可能な飲み薬として、その評価は日々高まっていると言っていいのです。

 私はすぐに新薬には飛びつかない方針なので、クリニックで本格的に使い始めたのは16年になってからですが、これまでのべ700人ほどの患者さんに使用し、おおむね良好な治療効果が見られています。

 処方の対象としては2型糖尿病の患者さんで、足の血流が悪い人や、膀胱炎を繰り返しているような人には処方をしていません。その範囲でいうと、尿路感染で困ったということはほとんどありませんし、安全に使用が継続できています。ただ、中には尿の回数が多くなったという訴えで、使用が困難となった方はいます。

 ひとつ事例をご紹介します。事例はEさん。40代の男性で、健康診断の空腹時血糖が252㎎/デシリットルと高く、糖尿病のコントロールの指標であるHbA1cは11.2%と上昇していました。

6 / 13 ページ

石原藤樹

石原藤樹

信州大学医学部医学会大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

関連記事