がんと向き合い生きていく

30年前にボリビアで出会った少年はいまどうしているだろうか

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 小屋の前では、牧場で働いている5人ほどが笛などで「コンドルは飛んで行く」の演奏をしています。その演奏を聴きながら、私たちだけが食べて、飲んでいます。用意してくれた方々は、演奏し、私たちを見ているだけで一緒には食べない……なんだかとても気の毒に思いました。

 食事が終わっても、なお、演奏が続いています。その後、今度は的当てのゲームが行われました。遠くの的に当たったかどうかを走って見に行くのは現地の方でした。このようにして、日本から学会に出席したわれわれを歓迎してくれたのでした。

 帰りの飛行機は少し大きく、上下動もなく飛べてサンタクルスへ安心して戻れました。

■われわれが失ってしまったものがたくさん存在する

 夜になると、ボリビア学会の会長さんのお宅で歓迎食事会がありました。集合は夕方5時半ごろでした。20人ほどの方が立ったまま、それぞれウイスキーグラスやワイングラスを手に飲みながら、雑談が始まりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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