Dr.中川 がんサバイバーの知恵

食道がん公表のチバユウスケさん他界…飲酒後は唾液中の発がん物質濃度が10倍に

飲酒後に酔ってそのまま寝てしまうのはNG

 口の中には、たくさんの細菌がいて、一部の細菌はアルコールを材料として発がん物質のアセトアルデヒドを産生。その結果、飲酒後の唾液中アセトアルデヒド濃度は、血液中の10倍ほどの高濃度になるのです。

 日本人は人種的にアルコールを分解する酵素(ALDH2など)の働きが弱い人もいます。飲酒で赤ら顔になるのがこのタイプ。そういう人は、唾液中アセトアルデヒド濃度が、さらに2~3倍高いという報告もあり、食道のほか咽頭や喉頭のがんにもなりやすいことも分かっています。

 前述した膜がないことによるアルコール自体の影響と相まって、食道は飲酒によってがんができやすい。たばこにも発がん物質が含まれるので、それぞれ単独はもちろん、重ねるのは余計に高リスクです。

 飲酒後に酔ってそのまま寝てしまうことは、お酒好きならだれしもあるでしょうが、これを続けるのは食道がんとの関係でよくありません。飲酒後のうがいや歯磨きは大切です。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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