がんと向き合い生きていく

年内に手術をしてほしい…そう希望するがん患者の気持ちは理解できるが

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「でも、本人は早くしたいと焦っているみたいなんだ」

「患者さんにしてみれば、年内に手術を終えて新しい年を迎えたい気持ちはよく分かる。ただ、その息子さんが手術を急がなければならない理由は他に何かあるのかな? すでに予定されている患者さんの手術を遅らせて、割り込んで、息子さんの手術を早めるようなことはできないと思う。

 資料を持ってセカンドオピニオンとしてほかの病院を受診して、心配なこと、そして年内に手術可能かどうかを聞いてみるのもひとつの方法だろう。その時はA病院では『年明けになる』と言われたことも正直に話す。それが、息子さんにとっても納得できていいのではないか。

 多くの病院では、手術予定が、たとえば月曜日は上部消化器外科、婦人科、火曜日は整形外科、大腸外科、水曜日は泌尿器科、乳腺外科……といった具合に決まっている。そこに正月が挟まってくると、どうしても1、2週間は空くわけで、ある患者を無理やり早く割り込ませるわけにはいかないと思う。緊急性がある場合は万難を排して手術を早めるはずだが、患者の希望というだけの理由で、無理やり早くすることはできないだろう。がんの場合で、手術が1、2週間遅くなっても、後々に影響することはないと思う」

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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