正解のリハビリ、最善の介護

全身が硬直して動かせない患者のリハビリはどんな方法で行われるのか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 なんらかの作業をする際も、リハビリを行っている最中も、常に声をかけながら進めます。歩行訓練の時は「イチ、ニ、イチ、ニ」と一緒に声を出したり、「どこか痛いところはありませんか?」「今日は調子がいいですねー」といった簡単な会話からコミュニケーションをとり続けます。リハビリでは、脳に快適な刺激を与えることが重要なのです。

 リハビリによって、意識がはっきりしてきて、なんらかの反応や会話ができるようになってきたら、簡単な計算の問題を解いたり、文章を読んだり書いたりしてもらいます。短い文章からスタートして、徐々に長くしていきます。さらに、それらができるようになった段階で、今度は頭で考えて答えを導き出すクイズのような訓練を繰り返します。その際のポイントは、本人ができるレベルの課題を与えて成功体験を与えていくことです。

 このように、身体機能や体力を向上させるリハビリと並行して、脳にステップに応じた刺激を与えるリハビリを行うことで、“人間力”を取り戻せるのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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