正解のリハビリ、最善の介護

全身が硬直して動かせない患者のリハビリはどんな方法で行われるのか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

■投薬とリハビリを併用する

 そこで、「バクロフェン持続髄注療法(ITB療法)」とリハビリを併用する治療を計画しました。バクロフェンは、筋肉をほぐし痛みを和らげる筋弛緩薬で、脳卒中の後遺症や筋肉がこわばる病気の治療に使われます。このバクロフェンを脊髄の髄腔内に直接投与するのです。まず、バクロフェンを脊髄の髄腔内に注射して、痙縮した筋肉が弛緩するかを判定します。効果が確認できたら、次は脊髄の治療が必要な高さまで(この患者さんでは第3頚椎の高さまで)長いカテーテルを通して固定設置します。そして、薬剤が24時間持続的にじわじわ流れる装置を使ってバクロフェンを注入していきます。

 その患者さんは投与直後から上肢と股関節、膝関節と足関節の屈曲と痙縮が改善され、徐々に自分で手や足を伸ばせたり、曲げたりできるようになりました。これならリハビリを実施できます。介助しながら、座る、立つ、歩くといった訓練を行い、同時に声がけをしてコミュニケーションを図っていきます。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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