正解のリハビリ、最善の介護

回復期病院を選ぶ際に「主治医の力量」が重要なのはなぜか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

「精神科は専門外なので……」などと言う主治医では対応できず、リハビリもうまくいきません。さらに「覚醒障害」によって睡眠のバランスが崩れているケースもあります。「夜もそこそこ眠っているけれど、昼間も眠っている」という患者さんがこれに該当します。この場合、「昼間に起こす」治療が必要で、2つの方法があります。

 ひとつは、抗重力位の姿勢をとる=立たせて脳に重力を感じさせる方法です。抗重力位の姿勢では脳が刺激され、患者さんの覚醒が上がっていきます。そのため当院では、患者さんが入院してから2週間は迅速に立たせて歩かせ、コミュニケーションをとって脳に刺激を与えながらリハビリを進めていきます。

 これで覚醒しない患者さんは、本質的な覚醒障害があると判断できます。脳内のホルモンや神経伝達物質のバランスが崩れている状態です。こうしたケースでは薬物治療を行います。先ほども触れたドーパミンの分泌が少ないと活力が落ちて覚醒が低下します。ですから、ドーパミンを賦活する薬を使います。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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