老親・家族 在宅での看取り方

末期がん90代女性「一人娘とは絶縁状態で会うこともできない…」

何ができて、どこまですべきか改めて考えさせられることも…

 しばらくして、娘さんから当院あてにお手紙が届いたのでした。

「いつかは歩み寄ることもできたかもしれないと思っていましたが、そんな思惑とは裏腹に、母は突然逝ってしまいました。皆さまの手厚い介護は感謝しております」

 そこには、母に優しい言葉をかけるべきか最期まで葛藤があったこと、娘さんなりにできることは、できるだけやったことなどがつづられていました。

 在宅医療ではさまざまなご家庭に伺います。ご家族にいったい何があったのかは、私たちにはうかがい知ることはできません。複雑な感情が絡み合い、時にご家族の方々に後悔や寂しさが残るようなこともあるかもしれません。これまでも在宅医療は患者さんの療養生活全般に関わるテーラーメードなサービスを提供することを目指しているとお伝えしてきました。

 ですがこの患者さんとご家族との出会いは、私たちに何ができて、そしてどこまでするべきだったのか。さらにもっと踏み込むべきだったのか、またこんな時どうすればよかったのか。改めて考えるきっかけとなる診療でした。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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