電話口からも精神的に追い詰められていたことが伝わってきます。ですがご自身のお気持ちを吐露され、声の調子も心なしか和らいだと思ったその瞬間でした。
「私が悩んでいたことをねぎらってくれて、ありがたくて。昨日の先生は『いくらご家族とはいえカニューレを交換するのは大変だよね、怖いよね』って言ってくれて、今まで言われたことがなくて、その言葉がうれしくて。私、実は妊娠中でナーバスになっているんです。そうやって寄り添った一言をいただけて本当に救われました」(娘)
不安から解放された娘さんのすがすがしい声が響いていたのでした。
なにげない医師の同情の一言から、ご家族や患者さんの不安を引き出すこともあります。特に在宅医療ではご家族の負担が増え、ナーバスになりがち。時にはご家族の気を落とさないように不安に寄り添いながら、患者さんやご家族の方が本当に求めている言葉を探ることも重要なのだと考えるのです。
老親・家族 在宅での看取り方