正解のリハビリ、最善の介護

力量あるリハビリ医は「排泄障害」をどのように改善させるのか

「ねりま健育会病院」院長の酒向正春氏

 脳卒中や脳外傷、骨折外傷、肺炎、大きな手術などで急性期病院に入院となった場合、軽症者を除いた介助が必要になる患者さんは、食事やトイレはすべて自分のベッド上で行うことになります。急性期病院にはトイレ介助を実施するだけのマンパワーがないためです。こうなると、患者さんの排尿や排便の機能は低下していきます。さらに、ベッド上でずっと安静にしていることで手足の筋力が低下してきて、動けなくなってしまいます。

 このようにして排泄障害が生じた患者さんの排尿や排便を改善するには、ベッドからできるだけ早く起き上がらせて覚醒を良くし、立たせて、歩かせて、体力をつけることが必要です。その際、腹筋や骨盤底筋を強化する「立ち座り訓練」のリハビリが有効になります。イスから立って、また座って……を繰り返す訓練で、連続30回を1セットとして最低でも1日3セット(合計90回)行うリハビリです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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