正解のリハビリ、最善の介護

力量あるリハビリ医は「排泄障害」をどのように改善させるのか

「ねりま健育会病院」院長の酒向正春氏

 排便の状態も、脳卒中では腸の活動が低下して便秘になります。ほかの病気でも、長期の臥床が続くと腸の活動が低下して便秘になります。便秘の治療では薬がたくさん使われていて、多剤を併用される傾向も散見されます。しかし、われわれはシンプルな内服治療を行います。

 基本は桃核承気湯という漢方薬を1.25グラムから7.5グラムまで使い分けます。これで不十分な場合は、酸化マグネシウムで便性状を軟らかくすることで便秘を改善でき、イライラや不眠の改善にもつながります。

 便秘の改善にはリハビリも欠かせません。離床して、起き上がって、立ち座りをして、腹筋と骨盤底筋を積極的に鍛えることが重要になります。

 また、「下痢」の発生時は迅速に整腸剤で改善することが必須です。治療が遅れると皮膚のただれが生じます。便秘に下剤を使いすぎて、整腸剤も追加で処方しているケースも見かけますが、便秘は最低量の下剤内服で改善させることが大切です。

 排尿や排便の状態が良好になると、睡眠が良質になり、食欲も向上し、精神状態も穏やかになります。排泄機能の改善には、内服治療だけでなく、リハビリがとても重要なのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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