正解のリハビリ、最善の介護

力量あるリハビリ医は「排泄障害」をどのように改善させるのか

「ねりま健育会病院」院長の酒向正春氏

■排泄の状態が良好になると睡眠が良質になり食欲も向上

 こうした病態のために、急性期治療では尿道カテーテルを留置されることが多いのです。その後、状態が安定してカテーテルが抜去されれば、自尿ができるようになります。しかし、脳卒中の治療から1~3カ月もすると、今度は膀胱が緊張してきて尿を十分にためることができなくなり、再び頻尿となります。

 治療介入が行われる急性期でも、病状が安定してきた亜急性期でも、同じく頻尿が生じるのですが、その病態は膀胱が弛緩しているか、緊張しているかで、まったく逆の状態になります。つまり頻尿は、膀胱を縮めるか、拡張するか、病態によって正反対の内服治療が必要になるのです。病態の診断は、排尿前の膀胱に残る残尿を測定すれば、多いか少ないかでわかります。ですから、頻尿などの排泄障害を気持ちよく改善させるには、病態をきちんと判断する主治医の力が大切です。そして、急性期で使用される膀胱カテーテルは基本的には全例抜去は可能となります。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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