レカネマブは、アミロイドβに働きかける薬なので、脳内にアミロイドβが蓄積していなければ、その効果を得ることはできません。認知症の原因はアルツハイマー病だけではありませんから、アミロイドPETや脳脊髄液検査で、レカネマブの投与前に「この患者さんは本当にレカネマブが効くタイプの認知症なのか」を調べるわけです。
脳脊髄液検査を受けている人が健康保険の適用外になるのは、すでにレカネマブ投与の対象になるかどうかの検査は済んでいるため。アミロイドPET検査は高額な検査ですから、対象が厳格に決められているのです。
中等症以上のアルツハイマー病患者さんも、アミロイドPET検査の保険適用外です。アミロイドβは蓄積していく中で、タウタンパクという別のタンパク質の蓄積・凝集を招き、やがて神経変性が生じてアルツハイマー病の症状出現に至る。中等症の患者さんでは、アミロイドβの蓄積より、さらに進んだ段階へ移行しているため、レカネマブの効果がさほど得られないからです。
第一人者が教える 認知症のすべて