がん保険 本当に必要ですか

<6>保険は「患者申出療養」には無力

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 しかし、効果が高いとされる抗体医薬や分子標的薬は、1カ月分の値段が数十万円から数百万円もします。そのクスリ代は患者負担のままなので庶民にはまだまだ高いハードルです。国は、「効果が認められれば、それらのクスリも将来的に健康保険適用にする」と言っています。しかし医療財政的には、かなり難しいかもしれません。

 がん保険も、患者申出療養には無力です。入院給付金や通院給付金も、これに関しては出そうにありません。

 ただ、希望者が多ければ、いずれ保険会社は「患者申出療養特約」を必ず出してくることでしょう。上限1000万円とか2000万円といった保障が考えられます。

 そうなると、混合診療化が一層進むため、がん保険に加入しない限り、いい治療を受けられない時代が来るかもしれません。保険会社にとっては、好機到来といったところでしょうか。好むと好まざるとにかかわらず、我々はがん保険と真剣に向き合わなければならない状況に陥りつつあるのです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。