決算書でわかる有名病院のフトコロ事情

都立8病院の収支決算 28億超の補助金でも「広尾」は赤字

広尾は17億円の赤字(C)日刊ゲンダイ

 赤字幅がもっとも大きい広尾は、グループのなかでER(3次救急)、災害医療、島しょ医療(伊豆・小笠原諸島からの患者の受け入れ)を担当しています。実際、救急患者は1日平均60人以上、CCU(冠疾患集中治療室、主に急性心筋梗塞患者などが入院する)の受け入れが1日5人近くあります。また、島しょからの入院患者は年間1100人、遠隔画像診断が年間1000件以上。しかし、それらの医療は採算性が悪く、しかも病床利用率が66%と、グループ最下位です。都や国から合わせて28億円以上の負担金・補助金が注入されていますが、それでも17億円もの赤字に終わってしまいました。

 黒字幅がもっとも大きい多摩総合も、多摩地区のERを担当しています。こちらは病床利用率が90%を超えており、外来患者も1日当たり1600人以上(広尾は673人)に達しているなど、好調に見えます。しかし、負担金・補助金などの総額は実に56億円。それでようやく12億円の黒字が出ているのです。

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永田宏

永田宏

筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。