独白 愉快な“病人”たち

6年前にくも膜下出血 神足裕司さんは「書く」が存在理由

コラムニストの神足裕司さんと奥様(C)日刊ゲンダイ

 そのくらいの状態で約1年ぶりに自宅に戻り、その直後からTBSラジオに手紙を書く形式で仕事を再開しました。ついさっきの出来事も、ちょっと前に考えていたこともすぐに忘れてしまうので、思いついたことは何でも書き留めるようになりました。左半身はまひで動きませんが、幸いにも右手は健在で書くことができるんです。

 だから、意識が戻ってからは早く仕事がしたいと思っていました。ヤル気がない時にふと横を見ると家族がいて、何も言わずに寄り添っていてくれる。それを見ると「頑張らないとな」と思い、家族のために復活したいと決意しました。自分のためだけだったら、もうあきらめていたかもしれません。

■「自分の筆で家族を養いたい」

 あれから丸6年です。食事もトイレもお風呂も介助が必要で、ソーシャルワーカーからも身内の医者からも、療養型の病院を勧められたこともありました。自宅を改装しても在宅介護は無理だろうと思われたのです。でも、妻、息子、娘がそれぞれに「パパを家に」と思ってくれていたようで、自宅に帰ることができました。もし療養型の病院に入っていたら今のボクはなかったでしょう。

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