体内では、SKA2に限らず、さまざまな遺伝子をメチル化したり、脱メチル化(メチル基を外す)したりして、その働きを調整しています。メチル化すると、遺伝子のスイッチが、いわばオフの状態になります。脱メチル化すれば、再びオンになります。このような遺伝子の制御を「エピジェネティクス」と総称しています。どんなきっかけで、どの遺伝子がオン/オフするのか、まだほとんど分かっていません。またエピジェネティクスは後天的なものなので、親から子へと遺伝することはないとされています。自殺願望が強い人は、メチル化によりSKA2遺伝子がオフ状態になっていた。そのため、自分の感情を抑えきれず、行動に及んでしまったと考えられます。なぜSKA2遺伝子がオフになったのか、原因は分かっていません。しかし、孤独感が強い人ほど自殺傾向が強いのですから、逆に孤独感こそがSKA2遺伝子のスイッチをオフにする有力な要因のひとつなのかもしれません。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。